「モニターの中に、世界はない」。1日1時間、スマホ禁止！Google会長が卒業式で語った「つながりの大切さ」

世界は「人とつながること」で、変えていくことができる。

Google社の会長エリック・シュミット氏は、母校ボストン大学の卒業スピーチでそう語りかけた。

私たちは今、世界中の情報を知り、人と人とをつなげられるツールをいつでもポケットに入れている。それは過去にはあり得なかった、世界のボーダーを変えるチャンスが誰にでもあるということを示している。あとは私たちが、それをどう活かしてチャレンジしていくかなのだ。

エリック・シュミット氏のスピーチをざっくりとまとめると、こうだ。

1. 今の世代は、生まれながらにしてテクノロジーマスター
テクノロジーはもはやアイデンティティーの一部になっているし、この世代を通して人類をひとつにまとめる見えないひもの役割を果たしている。
 
2. テクノロジーで世界は一つにつながった
テクノロジーによって可能になった世界のつながりを、人間が上手く利用することができたなら、それは革新的。
 
3. 1日に１時間は、スマホの電源を切る
テクノロジーは単なる道具であり、テクノロジーにコントロールされてはいけない。1日1時間スマホの電源を切って、生身 
の人間と話しをしよう。結局人生で大切なのは、そうやってできた友達だから。
 
4. 迷ったら「YES」と言う
迷ったら、とにかく「YES」と言ってみる。そうすれば色々なことをする機会がもてるし、大きなことをやり遂げるきっかけ 
になる。
 
5. 成功を恐れない
多くの人は、失敗を恐れるどころか、成功することにも恐れている。大胆なことに挑戦してみる。無理そうでも、「なんとか道をみつける」と言うことが大事。

ここからは力強いスピーチを動画でご覧頂こう。テクノロジーの可能性はもちろん、私たち人間にしかできない大切なことにも気付かされる。

あなたたちの強みは、
生まれながらにして
テクノロジーマスター

私たちは両親や兄弟を選べないように、生まれてくる時代も選べません。どの時代にも同じようにそれぞれの課題を乗り越え、歴史を作ってきました。しかし、与えられたチャンスは違います。今あなた方の世代は過去のどの時代よりも、歴史を作るチャンスに恵まれているのです。

今までは、偉業を果たした者が人々に道を教示し、次の世代はそれをたどってきました。しかしみなさんは違います。過去には想像できなかった、世界中が簡単に繋がれる世代なのです。その繋がりを使えば、見えないひもで人類をまとめ、世界の理解を深めることだってできます。

今は決して好景気とは言えない経済状況です。でも皆さんには特別なアドバンテージがあります。生まれながらにテクノロジーマスターなのです。過去の世代の人が持つことのなかった繋がりを作り、育てていくことができるのです。これは素晴らしいスキルです。

皆さんの世代は、1日中コンピュータの前で過ごし、常に何かと繋っています。それを嘆くのは間違っていると思います。繋がるということは、嘆くことではなく、感謝すべきことなのです。

ネットで、世界の問題も、解決策も
すべて可視化できる

今世界では、54もの戦争と紛争が起こっています。15億人が1日1ドル以下の生活を強いられ、何億もの子供がお腹をすかせたまま短い生涯を終えます。とても悲しいですが事実です。

それから、権利を謳歌できるのも当たり前ではありません。民主的な政府のもとにいるのは、世界の半分の人だけです。誰もが繋がっていると思いがちなインターネットだって、世界でスマホを手にできるのはわずか10億人、ネットにアクセスできるのも20億人だけです。

しかしあなたたちの世代には、そんな世界を変えるチャンスがあります。人と繋がることは、政治、社会、経済を革命的に変える可能性を秘めているからです。皆さんはそんな素晴らしいツールを、ポケットに入れて持っているのです。

ただしそのテクノロジーは、それだけで成り立つものではなく、あくまでツールだということをお忘れなく。あなたがたはその力を上手に利用しなくてはなりません。そこには革新をおこすことや、起業をすることが必要です。

起業することは、社会をより繁栄させるためのエンジンになります。私は皆さんに小規模なビジネスからでも、ぜひチャレンジを始めてほしいと思っています。

1日に1時間は、
スマホの電源を切る

しかし、コンピュータには決して手に入れることができないものがあります。それは「心」です。デジタルで結ぶ人の繋がりはテクノロジーなしには成り立ちませんが、同時にあなた方の「心」がなければ成り立たないのです。

私は、皆さんがコンピュータを支配し、最大限に生かし、世界をよりよくしていくと信じています。だから決してコンピュータに支配されてはいけません。そのために、難しいことは十分承知ですが、1日1時間はスマホやパソコンの電源を切ってみてください。そして、スクリーンから目を離し、あなたの大切な友達や家族とリアルな会話をしましょう。「いいね」をクリックするのでなく、実際に「いいね」と口に出して相手に伝えましょう。クリックひとつで済まさずに、周囲に目を向け、匂いをかぎ、手に取って感じるのです。

モニター中に、
あなたの人生はありません

人生は、ステータスのアップデートを繰り返すことではありません。大切なのは、SNSの友達の数ではなく、心から信頼できる友達がいるかどうかです。人生とは、誰を愛し、誰と人生を共にしていくのかなのです。

さぁ周りを見て。数年前、あなたは彼らとスタートを切りました。そしてこのキャンパスで苦楽を共にしたのです。ここで出会った友人は、人生で最も強く結ばれた一生の友になるでしょう。私にとってはそうでした。彼らと共に未来に向かって歩き、未来をつくってください。

迷ったら、
「YES」と言うこと

それから、皆さんにはとにかく色々なことに対して「YES」と言えるようになってほしい。新しい国へ行くこと、新しい友達をつくること、新しい言語を学ぶこと、新しいスポーツを試してみること、すべてに「YES」と言ってほしいのです。

「YES」と言うことが、一番最初の仕事も、そのまた次の仕事も決めることになるし、一生のパートナーや子供たちまでも決めることになります。時には誰かの人生のために動くきっかけになるかもしれません。

「YES」はあなたを、楽観的でポジティブで、誰もが助けを求め、一緒に楽しみたいと思うような人物にしてくれるものです。ずっと若くいる秘訣でもあります。「YES」という小さな言葉が、大きなことを可能にしてくれるのです。だからこの言葉をよく使ってください。

成功することを、
恐れないで

最後にもうひとつだけやってほしいことがあります。それは、失敗を恐れないこと、そして成功することを恐れないことです。

私の好きなイタリア語のフレーズに「サルト・モターレ(salto mortale)」というのがあります。これはネットなしの張り縄の上でとんぼ返りをするという意味で、無茶なパフォーマンスに対して使われる言葉です。

みなさんには、無茶をして欲しいです。ネットなしで挑戦してみてください。大丈夫、かならず両足で着地できるはずだから。

成功の確率が低すぎる人や、そんなのどうやるっていうの？と言ってくる人がいたら、こう言ってほしい。「なんとか道をみつける」と。

最後となりますが、なによりも、「自分の人生を真に愛する者」になってほしい。これ以上の説明は必要ないと思いますが。

みなさんの世代は、今までのどの世代よりも高いポテンシャルを持っています。だから私は、みなさんが新しい時代を切り開いていくと信じています。聞いてくれてありがとうございました。そして、ご卒業おめでとうございます。

Top photo by TechCrunch/ Reference：youtube

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