郵便配達夫の空想と情熱が創り出した、摩訶不思議な宮殿「シュバルの理想宮」
©flickr/emmett anderson
神殿のようでもあり、宮殿のようでもある、摩訶不思議な巨大建造物。
「シュバルの理想宮」と呼ばれるその建造物は、140年近く前に、あるひとりの男性の手によって作り出されました。
どこにあるの?
フランス南東部のドローム県にあるオートリーブ村。
小さな小さなこの村で、郵便配達夫として暮らしていたフェルディナン・シュバルという男性は、世界各地から届くエキゾチックな風景が描かれた絵葉書を眺めながら、いつも外国への憧憬を膨らませていました。
空想は現実へ
ある日、いつものように郵便を配達していたシュバルは道端の石につまずきました。よく見ると奇妙な形をしているこの石に不思議と心を奪われ、この些細な出来事をきっかけに石を集めるようになり、毎日配達の仕事が終わってから少しずつ石を積み始めるようになりました。この時シュバルは43歳。
子供の頃から空想好きだった彼は、絵葉書や世界中の神話などから得たインスピレーションをもとに頭の中で描いた宮殿を現実のものへと築き上げてゆきました。
あらゆる時代の様々な建築様式をごちゃまぜにしたようなその摩訶不思議な建物は東南アジアの森の中に佇む寺院、あるいは中東の荘厳なモスクのようでもあり、アフリカの大地に建つ宮殿や神々の家のようにも見えます。
人と比べるとその大きさがよくわかります ©flickr/mcbardin
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「ひょっとしてこれはカンボジアのアンコールワットからインスピレーションを得たのかな?こっちはエジプトの神殿・・・?」という風に、夢中でシュバルの空想を追いかけてみたくなります。
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こだわりは細部までに及び、宮殿の壁や柱はたくさんの人間や動物、巨人、妖精、天使、神話の登場人物、植物などでびっしりと飾られています。
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混沌としつつも美しい空間はまさにシュバルの空想が生み出した小宇宙。見る者に忘れがたい強烈な印象と感動を与えてくれます。
シュヴァルの理想宮が私たちに教えてくれる大切なこと
「人生は 駆け抜ける駿馬のごとく だが、私の思想はこの岩と共に生きるであろう 」宮殿のあちらこちらにシュバルの言葉が刻まれている ©flickr/mcbardin
周囲から「変人が奇妙なものを創っている」とバカにされても、仕事の傍らたった一人でコツコツと石を積み上げ、夢の実現に情熱を燃やし続けたシュバル。
建築の専門的な知識や特別な道具、資金があったわけではありませんが、彼がたった一つ持っていたものがありました。それは決してあきらめない心。
全てのはじまりとなった、シュバルがつまずいた石 ©flickr/mll
33年もの歳月と燃えるような情熱を傾けて、その空想を現実のものへと創り上げたシュバル。長い年月の中、様々な困難もあり挫折しそうになったこともありましたが、彼は決して途中で投げ出そうとしませんでした。
シュバルは次のような言葉を残しています。
「いくつになっても、どんな願いであっても成し遂げられる。勇気と忍耐を持ち、勤勉でさえあれば」
夢に向かって一心不乱に取り組むことの尊さや、最後まで決してあきらめない心を持ち続けることの大切さなど、シュバルの理想宮は私たちにたくさんのことを力強く語りかけてくれます。
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